なぜマネジメントがうまくいかないのか【第2回】    ~その習慣を止めれば、マネジメントが動き出す~

  

1-2 マネジメント領域で動くことができる人


作業領域とマネジメント領域


マネジメント能力の定義をもう1度見てみましょう。


未知のマネジメント領域において、自分の頭で考えてプロセスとゴールを設定し、
組織や全体の成果獲得に向けて自走する力



マネジメント能力は、マネジメント領域で動くための力であるということです。


マネジメント能力について考える時、まず、世の中の仕事は、「作業」と「マネジメント」という二つの領域に大別でき、それぞれの領域は異なる能力を求めるのだということを、前提として知っておく必要があります。


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<作業領域>

既知の場面で、過去に経験のある業務に取り組み、定められた段取りに従って決められたゴールに向かうことが求められます。経験則に従って進むので、自力で方向性を決めたり判断や意思決定を行ったりする必要はありません。全てにおいて経験知を当てはめられるので、困難に直面して停滞することはなく、費やした時間なりの成果が積み上がります。これから取り組む分量がわかれば、過去の経験からその処理に費やす時間が推察できます。「〇時頃には終わるよ」と言える時、それは作業領域の仕事です。

「与えられた情報をそのままインプットし、記憶に留め、必要な時にアウトプットする」という能力が高い人は、仕事の段取りを早く正しくたくさん覚えることができ、それを忘れません。対応も迅速なので、作業領域で生産性を高めることができます。ちなみにその能力は学力(学力的情報処理能力)と呼ばれます。


<マネジメント領域>

未知の場面で、その時に得られる多様な情報を処理して自らが方向性を定め、段取りやゴールも自分で決め、自分の力で判断や意思決定に進む力(マネジメント能力)が求められます。過去に経験の無い業務ですから、どれくらい時間がかかるか見当もつきません。それどころか、終わるのかどうかもわかりません。膠着や停滞の連続は当たり前で、何のアウトプットも出ないまま時間だけが経過することも、ごく普通に起こり得ます。

過去に仕入れた情報をそのまま当てはめることができないので、マネジメント能力を使えなければ、それまで蓄えてきた潤沢な経験知も無用の長物と化すでしょう。この領域では、前述の学力的情報処理能力が時に無力化されます。

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管理職(マネージャー)はマネジメント領域で、実務者は作業領域で仕事をしなさい」という役割分担がイメージされがちですが、それは半分だけ正解です。まず管理職は、マネジメントが本来の役割なのですから、マネジメント領域を主戦場とするのは当たり前です。しかし、「実務者がマネジメント領域に入ってはいけません!」ということではありません。


マネジメント領域で動くことが多い実務者ほど、「仕事ができる実務者」と称されます。つまり、「マネジメント領域で仕事をしなさい」は、年齢や職位を問わずすべての仕事人に投げかけられているテーマなのです。そのあたりを、もう少し詳しく説明していきましょう。


作業領域に逃げ込もうとするマネージャー


マネージャー(管理職)が、マネジメント領域で動く事は本来当たり前のことで、欧米の先進国では、マネージャーはマネジメント領域で動くことが契約で求められます。「作業領域には立ち入るな!」ということです。ところがわが国では管理職の大半がプレイングマネージャーであり、作業領域への侵入が許されてしまっています。歴史的背景や諸々の事情があって日本にこの特有の仕事文化が根付いたわけですが、このことが日本企業のマネジメントパワーを弱くしていることに疑いの余地はありません。


マネジメント領域での仕事は、先の見えない孤独な戦いとなることが多く、心身に負担がかかります。おまけに、自分が費やした時間なりに成果が積み上がるわけではないので、「時間をかけたのに何も生まれない」「周囲からさぼっていると見られはしないか」のような葛藤とも対峙せねばならず、心穏やかではいられません。


そんなしんどいマネジメント領域に自ら足を踏み入れ、敢えてそこに留まろうとする人がいます。多分それは、自分のためだけではありません。人は他者への責任を背負わないと、しんどいことを続けられないようにできています。「マネジメント領域の住民は利他性が高い!」…そこに例外はないのです。


一方、その優しさが足りないマネージャーは、いつも作業領域に逃げ込んで上級実務者を気取り、マネージャーでありながらマネジメント領域には近づきません。ここに、「困った管理職」の本質があります。


マネジメント領域で動くことができる実務者


一方、「まだ役職を持たない実務者の主戦場は作業領域」と思われがちですが、実際に職務に就いてみると、作業領域だけに留まって仕事ができるわけではありません。


作業中に教えてもらったことや経験知だけでは対応できないイレギュラーな事態に遭遇した時点で、そこはマネジメント領域へと変わります。また、対人場面は、極めて定型的なもの以外、すべてマネジメント領域です。前回述べたように人は感情という非定型的なものを携えた「なまもの」だからです。対人場面を作業領域化しようとする人を時々お見かけしますが、そこに生産性は生まれません。


入社一年目の新人の前にもマネジメント領域は広がっています。優秀な実務者は、作業領域の業務を確実にこなしながらも、必要に応じてマネジメント領域で動くことができます。定められた役割をこなすだけでなく、自分で考え、自分で動くという行動を数多く見せて、「あいつ気が利くよね」「仕事できるよね」などの評価を得ている実務者は、マネージャーではなくてもしっかりとマネジメント領域で動いていることになるのです。


マネジメントやマネジメント能力は、マネジメント職だけに付随する概念ではありません。新入社員から管理職や経営職まで社歴や職位に関係なく、マネジメント領域で動くことができる人が、「仕事ができる人」と称されます。組織においては、若手からベテランまですべての仕事人にマネジメント能力が求められていると言っても、過言ではありません。


どうやらマネジメント能力とは、年齢や経験にまったく関係ないところに位置するもののようですね。ちなみに、私たちが大学生を対象に実施している新卒採用アセスメントでも、採用基準は「マネジメント能力を備えていること」に設定されています。


マネジメント能力とは、具体的にどんなものでどんなプロセスを踏んで機能するのか? ここからは、マネジメント能力の正体を掘り下げていきます。


                                            【第3回】へつづく

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