なぜマネジメントがうまくいかないのか【第1回】     ~ その習慣を止めれば、マネジメントが動き出す ~



第1章  マネジメント能力の正体


1-1 「マネジメント能力」を集約的に定義する


「マネジメント能力」って何ですか?


「あなたにとってマネジメント能力とは何ですか?」


私たちのマネジメント研修は、受講者の皆さんに向けたこの問いかけから始まります。


私たちは、1999年の創業以来、一貫して「マネジメント能力開発アセスメント研修」を提供しています。受講者のマネジメント適性をアセスメントする一方で、「マネジメントとは何か」と「どこを頑張ればマネジメント能力が高まるのか」を受講者に伝え続けてきました。


この仕事をする中で、ずっと気になっていることがあります。


「マネジメント能力の定義が社内で共有されていないこと」

「会社が管理職に求める役割を明文化していない会社が多いこと」

「マネジメント能力の強化に向けた頑張りどころを知らない人が多いこと」


私は、たった1日の研修の中で「マネジメント能力の正体」と「その強化のためにやるべきこと」を集約的に伝えます。難しい理論を振りかざすわけでもなく、よく考えれば当たり前のことしか言わないので、その内容を理解してもらえなかったことはありません。否定されたこともありません。


ただ、「研修の効果」は、人それぞれです。


言われたことはわかるけど、「自分には関係ないし」の人

言われたことはわかるけど、「自分にはもうできないかも」の人

言われたことに背中を押され、その日から変わる人


どの会社にも「その日から変わる人」は必ず一定数存在しますが、多数派にはなりません。多くの場合、「わかるけどできない人」がボリュームゾーンを形成することになります。それまでずっと自分のスタイルでやってきた人が、いきなり今日から「逆のやりかた」を習慣づけろと言われても、それは現実的ではないのでしょう。


大変残念なことなのですが、日本の教育や文化が、本当のマネジメント能力が醸成されにくい前提を作ってきたような気がします。だから、多くの人が社会に出て仕事を始める前から「正しくないやりかた」に慣れてしまい、そこで生じる問題に向き合う機会をなかなか持つことができないまま歳を重ねていきます。


「マネジメント能力の高い人とは?」「仕事ができる人とは?」という問いに対する正解をはっきりと見せつけられれば、そこに向かって頑張ろうと自分のねじを巻きなおす人が増えるのではないでしょうか。そんな変容のきっかけをもっと多くの方に提供しなくては…と考えて、私が研修やセミナーで日々伝えていることをこの連載コラムにまとめることにしました。(毎週1回アップする予定)


研修に参加しているような気分で、読んでみてください。


「マネジメント能力」の定義


「あなたにとってマネジメント能力とは何ですか?」


研修冒頭の問いかけに対する受講者の皆さんの答えは様々です。


「組織を運営する能力」

「部下を管理する能力」

「問題を解決する能力」  などなど。


「マネジメント能力」に対する理解がこんなにばらばらでいいのか? と、いつも思います。


どれも正解なのですが、部分的な正解なのですよね。当たり前のことですが、部分的な概念に縛られて物事を語るのは危険です。「マネジメント能力は部下を管理する能力だ!」と信じている人にとって、「組織運営や問題解決はマネジメントの領域外」ということになってしまうのですから。


また、「部下を管理する能力を高めるためには、どうすればよいのか?」などというテーマが設定された時点で、「部下とのコミュニケーション能力を高めなくてはいけない」→「面談のロールプレイング」のような、その後の浅薄な展開が見えてしまいます。


やはり、「マネジメント能力」は集約的な概念で定義されなくてはいけません。そうすれば、その能力を強化するための手段も、「それさえやっておけばマネジメント能力は必ず強化されるよ」という集約的なものになります。


マネジメント能力とは…

未知のマネジメント領域において、自分の頭で考えてプロセスとゴールを設定し、組織や全体の成果獲得に向けて自走する力


これが、「マネジメント能力」を示す集約的な概念です。


もっと簡単に言えば、「自分の頭で考えて自分で動く力だよ」ということ。これができないと、「それまでに学んだ知識や積み上げてきた経験則に頼らないと前に進めない人」になってしまいます。


集約的というくらいですから、いろいろな人がイメージしているそれぞれの「マネジメント能力」を、この概念はすべてカバーしてしまいます。


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組織運営!

今は、経済成長が右肩上がりで「昨日の正解は間違いなく今日の正解」と言えるような時代ではありません。常に未知領域が広がっているような状態です。組織の運営に際しては、今の環境や経営資源の状況と、今目の前で起こっていることに真摯に向き合い、「過去に通用したこと」と「現状」とを折り合わせて今やるべきことを自分で決めることが求められます。その手間を省いて自分の経験知をそのまま持ち込むことを繰り返したら、その組織は無駄と無理を積み上げてどんどん疲弊していくでしょう。

部下管理!

部下に接する時は、常に未知の領域で動く覚悟が求められます。人は感情を持つ「なまもの」だからです。その場の重要性や深刻度が増せば増すほど、非言語情報を含む相手が発する情報に向き合って相手の本意や心情を理解しようと努力し、「今相手がしてほしいこと」と「今自分が相手にしてあげられること」を一生懸命考えなければいけません。その尽力を省き、相手の発した1つの言葉に即座に反応して自分の知識や経験を投げつけたら、その人は間違いなく嫌われることになるでしょう。

問題解決!

目の前で起こったことに経験知やマニュアルを頼りにして対処するのは、作業者の仕事です。マネジメントの主体者に求められる問題解決は、そのような事象を引き起こす根本的な原因がどこにあるのかを、得られる情報をすべて集めて浮かび上がらせ、その本質的問題にアプローチすることです。未知の場面を自ら作り出し、その先の進み方を自分で考えるこの取り組みを課題形成と言いますが、時間と労力を要するので、その世界に入るのを嫌い作業者のお手伝いをして問題解決を果たした気になっているマネージャーが少なくありません。そんな人が率いる組織では、本当の問題解決が常に先送りにされ、そしてその問題は水面下でどんどん大きくなっていきます。

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現実を鑑みれば、マネージャーの仕事はマネジメントばかりではありません。部下より豊富な経験を活かし、上級実務者として部下の仕事をサポートしなくてはいけない場面も多々あるでしょう。でも、そこはマネージャーの本来の働き場所ではありません。


MANAGE= 何とかやっていく 


経験や知識をそのまま持ち込めない前述のような重要な場面で、その時点での最適な方向性を示すのがネジメントの仕事であり、そこに求められる力が、「自分の頭で考えて自分で進む力=マネジメント能力」なのです。


「MANAGE」という英単語には、「何とか成し遂げる」「何とかやっていく」という意味があります。そもそも、困難な状況を打開することが前提となっている言葉なので、そこには相応の気概や熱量が必要になります。


「少ししんどくてもやってやろう!」という気概と熱量を持つ方は、ぜひこのコラムで伝える内容を自分のものにしてください。必ずマネジメント能力の強化に向けた正しい第一歩を踏み出していただけると思います。

                                            

                                            【第2回】へつづく