╂ 処方箋の解説 ⓳ ┛ 見えやすい能力

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応募者の美しい言動に惑わされずその本質を見極めるには、どう頑張ればよいのでしょうか。

応募者が見せたがっている意識的行動を視線から外して無意識行動を拾う訓練が必要です。

 

 

 

前述のように、人の能力には見えやすいものと見えにくいものがあります。

 

学力的情報処理力は見えやすい

見えやすい能力の代表的なものとしては学力的情報処理力があり、採用選考の場では、「発言量の多さ」「反応の速さ」「起動の速さ」「知識量の多さ」などの形で可視化されます。これらは作業領域で威力を発揮しますがマネジメント領域では役に立たないことも多くなります。これに対して、見えにくい情報処理力が思考力です。作業領域の少ない中小企業には、思考力の高い人が構造的に必要です。だから中小企業の経営者の多くが思考力を求めて採用に臨むのですが、どうしても見えやすい方の情報処理力に目を奪われてそれらを思考力と見間違えた結果、「学力は高いが思考力に欠ける人」を採用してしまうケースが頻発します。

 

学力的情報処理に優れた人の中には、表現力や発信力が豊かな人も多く含まれます。どちらも本来は重要な能力ですが、時に「自分を良く見せる」という目的で悪用されることもあるので要注意です。自分の頭の良さを顕示したい時には前述のように情報量の多さやスピードで示せますが、「自分が自己中心的な人間ではなく人の心に寄り添える人間です」というように自分の人間性をアピールしようと思えば、そのことを自分の口から説明するしかありません。学力秀才は、自分のパーソナリティをどんな風に表現すれば一般的な採用者が喜び安心するかを、知恵として持っています。要は口が上手いのです。もちろん精神的に自立した「採るべき人」は、「自分がいかに人の気持ちに寄り添えるか」などを自分で語ろうとはしません。

 

瞬発力も見えやすい

学力的情報処理能力と並んで見えやすい能力が瞬発力です。応募者のエネルギー量やエネルギーの使い方は、採用選考時に必ず見極めるべき重要要件ですが、そのエネルギーに関する特性にも、見えやすいものと見えにくいものとがあります。前者が瞬発力(瞬間的に大きなエネルギーを使う力)で、後者が持続力(継続的かつ安定的にエネルギーを使う力)です。瞬発力は、「明るく元気に振舞う」「力強く相手や周囲に働きかける」「人に先駆けて動く」などのような形で可視化され、採用選考でも容易にキャッチすることができます。それだけに、採用面接などでこの力をキャッチした採用側は、「その応募者のエネルギー面については大丈夫」と喜んでしまいがちなのですが、それはとても危険な早とちりです。

 

マネジメント能力の絶対必要条件のひとつである「人のために動く力」は、自己中心的に自分の欲望のまま動こうとする欲望を制御し、「組織の中で自分が存在する前提や自分に課せられたミッション」や「他者との約束や他者への感謝の気持ち」などを自分の中に留め置ける力です。この力は、自分以外のためのエネルギー投入を維持する力なので、この力を持つ人には必ず責任感を伴う持続力が備わっています。瞬発力は物事を前に推し進めるために必要な力ですが、その力だけがあっても持続力が伴わなければ長期的で全体的な成果は担保されません。「自分のパッションに任せて何かをぶち上げてはみるけれど、何ひとつ長続きしない」そんな人が世の中に溢れています。持続力は静かに粘り強く働く力です。長い時間かけて維持される力を採用面接などの限られた時間で捉えようとすることには、物理的な無理があります。

 

あとひとつ付け加えるべき嫌なことがあります。本当はとてもエネルギー量が少ない人でも、採用選考の時に明るく元気な人や率先して動く人を振舞うことくらいはできるのだということを、忘れてはいけません。

 

採用面接やグループワークで気をつけるべき「応募者の見えやすい行動」一覧

 

《学力的情報処理力を映す行動》
※ 情報処理の量と速さを期待できるが、マネジメント能力の絶対必要条件である「思考力」の高さを示すものではない。

✓ 素早く起動する

✓ たくさん話す

✓ 問いかけに対し即座に言葉を返す

✓ 豊富な知識を披露する

✓ 豊富な語彙力を示す

✓ 自分のパーソナリティを巧みに語る

 

《瞬発力を映す行動》
※ 瞬間的な熱量の高さは期待できるが、マネジメント能力の絶対必要条件である「人のために動く力」を支える持続性を示すものではない。

✓ 明るく元気に振舞う

✓ はきはきと話す

✓ 力強く相手や周囲に働きかける

✓ 人に先駆けて動く

✓ 押し出しが強い

✓ 周囲や相手を主導する

✓ 声が大きい

 

大切な能力に向き合うために求められること

上の一覧に挙げた行動自体に問題があるわけでは決してありません。これらの行動特性が仕事場での生産性に与える影響は様々で、短期的には生産性を高める行動も混じっており、それぞれの行動を示した人を即座に警戒すべきという話ではないのです。

 

問題なのは、これらの行動には、観る人を安心させる魔力があるということです。これらの行動に触れると、その応募者が優秀であると思い込まされてしまうのです。学力的情報処理力がもたらす流麗な言動を目にしては思考力まで高いと思い込み、瞬発力がもたらす印象的なパワーを目にしては責任感を伴う持続性まで備わっていると思い込んだ採用関係者は、その応募者が入社するまで自分の勘違いに気が付きません。

 

これらの行動は概して「自分の武器を早く見せたい」と意気込む応募者の意識的行動なので、採用選考の場が始まるや否や次々と姿を現します。それに観察者が目を奪われ心を掴まれてしまうと、その後大量に出現する観るべき行動情報に対して冷静な心で向き合えません。実は世の中の採用ミスの多くが、このパターンで生まれているのです。

 

一覧にある行動を観察者が頭の中にしっかりと留め置き、採用選考の場で応募者が繰り出すそれらの行動に対して肯定も否定もしない静かな心で向き合うこと

 

このことを実践できて初めて、採用選考の場で応募者の本質を示す無意識的行動が見えてきます。本当に観なくてはいけないものにアプローチするためには、見えやすい行動に無関心になることが最低限の心の準備として求められます。

東京の世田谷に生まれ(昭和35年)鎌倉に育ちながら、高校卒業後に関西へ流れ、大学卒業時には立派な関西弁を話せるまでに成長する。大学で体育会ラグビー部に足を踏み入れるも、タックルが出来なくて干され、徹夜のバイトが監督にばれて干され、と、「なんちゃってラガー」への道をまっしぐら。4年生でやっと公式戦への出場がかない、初出場の日の前夜は、ジャージーを抱いて泣きながら寝た。卒業後に入った商社で、早速、語学難民となり、「このまま日本に置いておいてもこいつは英語を覚えない」と当時の事業部長に判断されて、入社後1年も経たないうちに香港の現地法人に飛ばされる。現地の英国人達とプレーする中でようやく面白くなり始めたラグビーの合間に仕事も少しだけ頑張る、という充実の日々を送り、バブルもはじけた平成2年の春に5年間の任期を終えて帰国。その後、いわゆる大企業の海外部門を転々とするが、会社と仕事が肌に合わず、日に日に心が萎んだ。ついに重度の抑うつ状態にまで陥ってしまったが、そこに至ってようやく「自分の強みは本当に『国際』『語学』なのか?」「本当に自分の良さを活かせる仕事は何なのか?」というテーマに、正面から向き合うことになる。「世間からの評価」への執着を断ち切り、自分の価値観に正直になって新たなフィールドを選んでからは、心の元気を取り戻し今に至る。37歳の時に入社した人事系のコンサルティング会社でアセスメントセンターに出会って惚れ込み、これを生涯の仕事とすることを決意。39歳の時に今の会社を設立した。歳をとっても痛くて苦しいことが大好きな「変なおじさんたち」が集う中年ラグビーチーム(不惑倶楽部)に所属していたが、50を前にして捻挫をこじらせ距骨壊死というややこしい状態に陥って離脱。10年間手術を公言し続けるも諸事情で実現せず「切る切る詐欺」と揶揄されてきたが、還暦を直前に控えた2019年の暮れに突如人口距骨への部品交換を決行した。「これでラグビーもゴルフもばっちりだぜ!」と、元々の技量と加齢という現実を忘れて妄想中。

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