╂ 処方箋の解説 ⓰ ┛ 真面目な人より尖った人を(前編)

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真面目な社員ばかりで面白みが無いので、今後は「尖がった人」も採用していきたいです!

採用に格好つけるのはやめて、「真面目」の意味と意義を真面目に見直してください。

 

 

 

誰も課題を理解しないのに発言が飛び交うグループ討議

新卒採用アセスメントのグループ討議に臨む学生たちは、会場に入って着席するとすぐにA4二枚にびっしりと情報が詰め込まれた「課題」が渡され、十分間でそれを読み込み討議の準備をするように指示されます。その内容は、世の中の企業でよく見られる普遍的な経営問題をモチーフとしたもので、学生にとっては未知の領域になります。難しい言葉があるわけでも専門知識を必要とするものでもありませんが、それでも情報量が相当なものである上に、読む人を惑わせるようなアセスメントの罠が随所に張られていたりするので、「何が書いてあるのか」を理解するまでには相当な時間を要するように作られています。どう考えても十分間で書いてあることをしっかり理解し全体像を把握できるようなものではありません。

 

にもかかわらず、その十分間が過ぎて討議の開始が告げられるやいなや、学生は我先にと話し出します。まず十分間では理解できないように作られている課題なのに、なぜこんなに多くの学生が発言できるのか。想定以上に天才が多いのか。いえいえ、彼ら・彼女たちのほとんどは、課題の内容を理解せずに話しているのです。

 

採用選考の一環であるグループ討議に臨む学生は、一様に「たくさん発言しないと受からない」と信じています。だから発言することが目的化され、「内容を理解できなくてもとにかく発言しなくては」となってしまうのでしょう。内容を理解せぬまま話す方法は、実は結構たくさんあります。ここでは細かく書けませんが、いろいろなものに依存すればいろいろなことを話せます。例えば、「☓☓って書いてありますけど、皆さんはどうお考えですか」のように、自分は何も考えず他のメンバーに依存することによって、とりあえず、発言するという目的は果たせます。

 

「他のメンバー」以外にも依存先は意外とたくさんあり、概して学力の高い人の方が多くの依存先を持っているので、学力秀才の発言機会が多くなります。しかし、内容を理解できず、問題の全体像も全く把握できないから依存しなくてはならなくなるわけで、しっかりした目標設定の上での発言であるはずもなく、当然ながらその内容に生産性は宿りません。与えられた課題に真面目に向き合わず、少しだけ情報の取り回し(思考ではありません)がうまいのをいいことに依存行動を繰り返して発言を重ねていく学生を、もし採用する側が「優秀」と捉えてしまったら、それは恐ろしいことになります。

 

なぜなら、早々に課題と向き合うことを放棄し、その結果内容を理解できなくなって依存行動を重ねる学生は、精神的に自立しない人であることが多く、入社後に問題行動を起こすリスクが潜在するからです。たくさん話すこと自体がリスクというわけではありませんが、その発言の多くが依存の結果であるならば、その行動群はリスキーです。それを知らずに、グループで活発かつ軽やかに発言する一流大学の学生を見ると、それだけで「合格」を決めてしまうような人事担当者が世の中にはまだ多いようで、とても残念に思います。

 

メンバーが前提から離れていく新卒採用アセスメントのグループ討議

新卒採用アセスメントでよく見かける例をご紹介します。

 

前述の依存先の中で、討議メンバーを最も強力に助けてくれるのは、実は「経験」です。課題の中に自分の気になったキーワードを見つけ、それに関連する自分の経験を延々と語ると、かなりの尺を稼げるからです。経験豊富な人が集う中途採用アセスメントでは、経験の披露会のようなグループ討議になってしまうことが多いのですが、学生はそこで語れるような仕事の経験をあまり持ち得ないので、開始直後から経験知依存が連発されるようなことはありません。

 

メンバーの中に前述のような依存先が多い学生がいないグループでは、開始直後に一通りの依存発言が出終わると、討議が停滞してしまうことがあります。課題の内容を理解しようとしない上に、依存先も早々に枯渇してしまったのではそうなるのも仕方ありません。そんな時、突然一人の学生が、課題の中の一つの文言に反応して自分のアルバイトの経験を語り始めます。すると、それまであまり発言しなかった学生たちが、次々とその後を追い、あっという間にそのグループ討議はアルバイト談義になってしまいます。課題を理解できず、依存先も持たず困っていた学生たちは、一人が持ち出したアルバイトの話に光を見出したのです。「それを言えばいいんだ」と。 

 

そうなってしまうと、「与えられた情報から問題解決への道筋をつける」というグループ討議のミッションは、もはや誰の頭の中にもありません。新卒採用のグループ討議で頻繁に生まれる前提軽視の流れは、こんなふうにして作られます。この流れを作り、その流れに乗っていく学生たちの多くは、「対象に向き合えず、依存傾向が強くて、精神的に自立していないことが疑われる」と、アセスメントされます。

(後編に続きます)

東京の世田谷に生まれ(昭和35年)鎌倉に育ちながら、高校卒業後に関西へ流れ、大学卒業時には立派な関西弁を話せるまでに成長する。大学で体育会ラグビー部に足を踏み入れるも、タックルが出来なくて干され、徹夜のバイトが監督にばれて干され、と、「なんちゃってラガー」への道をまっしぐら。4年生でやっと公式戦への出場がかない、初出場の日の前夜は、ジャージーを抱いて泣きながら寝た。卒業後に入った商社で、早速、語学難民となり、「このまま日本に置いておいてもこいつは英語を覚えない」と当時の事業部長に判断されて、入社後1年も経たないうちに香港の現地法人に飛ばされる。現地の英国人達とプレーする中でようやく面白くなり始めたラグビーの合間に仕事も少しだけ頑張る、という充実の日々を送り、バブルもはじけた平成2年の春に5年間の任期を終えて帰国。その後、いわゆる大企業の海外部門を転々とするが、会社と仕事が肌に合わず、日に日に心が萎んだ。ついに重度の抑うつ状態にまで陥ってしまったが、そこに至ってようやく「自分の強みは本当に『国際』『語学』なのか?」「本当に自分の良さを活かせる仕事は何なのか?」というテーマに、正面から向き合うことになる。「世間からの評価」への執着を断ち切り、自分の価値観に正直になって新たなフィールドを選んでからは、心の元気を取り戻し今に至る。37歳の時に入社した人事系のコンサルティング会社でアセスメントセンターに出会って惚れ込み、これを生涯の仕事とすることを決意。39歳の時に今の会社を設立した。歳をとっても痛くて苦しいことが大好きな「変なおじさんたち」が集う中年ラグビーチーム(不惑倶楽部)に所属していたが、50を前にして捻挫をこじらせ距骨壊死というややこしい状態に陥って離脱。10年間手術を公言し続けるも諸事情で実現せず「切る切る詐欺」と揶揄されてきたが、還暦を直前に控えた2019年の暮れに突如人口距骨への部品交換を決行した。「これでラグビーもゴルフもばっちりだぜ!」と、元々の技量と加齢という現実を忘れて妄想中。

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