朝、「派遣切り」で大騒ぎになっているのをテレビのワイドショーがこぞって取り上げていた。昨日、偶然「派遣」について書いたばかりだったのでちょっとびっくりした。
各局の司会者さんたちがどんなコメントを出すのか興味があったので番組をいくつか「はしご」したのだが、いつもは元気一杯に世間を扇動するストーリーを作り上げる彼らが、今日は心なしかスタンスを決めきれずに歯切れが悪くふわふわした感じでお茶を濁していた。やはりこの分野は未だに「定見」が宿りにくいのか。いつも思うことだが、「労働」や「雇用」や「組織」など人的経営の話題になると、わが国のメディアは急に話の質のスタンダードを落としてしまうような気がする。
「安易な派遣切りを防ぐ対策」として与野党が対策案を出していた。ちなみに自民党案は、「派遣労働者を正社員として雇用した企業はひとりあたり百万円をもらえるようにしよう」だそうだ。(*_*; そもそも今回の騒動は、派遣の乱用という本質的な問題に起因する事象のひとつに過ぎないのだから、子供騙しの対症療法に二兆円を使うなどという冗談を言ってる場合ではなく、今こそ、派遣が正社員の代替として安易に使われている「間違った姿」を法規制をもって正してしまうチャンスだと思う。
そのためには「派遣や請負の規制が強化されたら、日本の製造業は立ち行かなくなる」などとのたまう財界トップの連中を押さえ込むことができる「自立した政府」の存在が必要だから、現実的には極めて難しいのかもしれないが。
「長きに渡って仕事をする労働者を直接雇用するのは当たり前でしょう」という二十前は当たり前だった正論が、今通じなくなりかけている日本はかなりおかしい。
直接雇用には嫌でも魂がこもる。例え有期契約社員であってもパートであっても会社と労働者との間には思考と責任が介在する。派遣をたくさん使うことよって、会社がその「思考と責任」の負荷から解放されることが、メリットなのか、デメリットなのか、は、その会社の環境、状況によりけりで、一概には言えない。せめて、そのメリット、デメリットを精査するプロセスは確保して欲しいと各企業の経営者に願ってやまない。
今、無思考に派遣を乱用してきた企業が本気で損得勘定を試みる気になったら、それだけで事態はかなり好転すると思う。派遣のバブルははじけるだろうが、筋の通った派遣の適材適所が整理され、「派遣のステイタス」も再確立されるかもしれない。
試しにこんなところから思考を巡らせてみてはいかがですか?
解雇リスクを回避したくて使った「派遣」なのに、今回派遣切りにあった方々やユニオンの攻撃の矛先はどこに向いていますか?
テレビのニュースに本来リスクを背負っているはずの派遣会社の名前は出てきますか?
リスクを「回避」したはずの派遣先企業の名前がでかでかと報道され、火だるまになっているじゃないですか。
「派遣は簡単にリスク無く切れる。」は妄想だったんじゃないですか?
実は、「妄想」はもっともっと潜在するんじゃないですか?