本物を知る力【復刻版】-2009年3月26日公開-
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「本当に美味しいものを出す店が廃業を余儀なくされるケースがこのあたりでは特に多い」という話を諏訪圏で飲食店開業を志すある人から聞いた。僕もそのような感覚を持っていたので興味深かった。
全国展開している某ファーストフードで諏訪に店を出しているフランチャイジーのオーナーが、このチェーン店の全国新メニュー開発コンクールで見事一位を獲得し、その新商品は全国で馬鹿売れしたのだが、諏訪だけ全く売れなかったそうだ。
志高く諏訪でお店を始めようとする人は、「諏訪で食べ物屋をやるなら、県外から本当に美味しいものを食べに来る人をターゲットにするか、諏訪在住の人に味やメニューを合わせるか、どちらかに決めなければダメ。両方追いかけると間違いなく失敗する」と、先達者からアドバイスを受けることが多いという。
前者のマーケットを狙うには、半端でない力量が要求される。リスクを取りきれなければ一般マーケットに迎合するしかない。この地に「本物」が相対的に少なくなってしまう構造的な要因が見えてくる。
もしかしたら、こうした傾向は諏訪だけでなく長野県全体に、あるいはわが国全体に強まっていること? なのかもしれない。
「美味しい店に人が集まらない」のは、味覚のせいなどではなく、慣れているものから離れず、新しいものに飛びつくものの本質は受け入れず、独自の感性を磨かず、主体的に動かない、といったマジョリティーの行動特性に起因するのではないだろうか。
今、諏訪の、そして日本の企業がこれだけ苦しんでいる原因のひとつに、その「行動特性」の積み上げがあるように思えてならない。