今日はある企業での新入社員研修を担当した。研修教育は僕たちの専門外なのでお話をいただいても謹んでお断りしているのだが、諏訪の会社の新入社員研修だけはなぜか続けてやらせてもらっている。
学校を出て初めて入った会社で教わるべきことを教わらないと、ずっと「知らないまま」だ。大量の新卒を採る大企業など、何ヶ月もかけて集合研修を実施できる会社がある反面、中堅以下の規模の会社の多くは早期に配属職場のOJTに新人教育を頼ることになりがちで、新人の汎用的な常識レベルが整備される機会は相対的に少ない。「知ってる/知らない」の違いだけで、両者の間で差ができるのは不条理だ。
恩義ある諏訪の地をこれから背負って立つ若者たちが不条理な目に合わないように、と、僕は不似合いな新入社員研修をやっている。
今日の会社は、新卒採用二十八名の中堅企業。この地域にしては珍しいしっかりした集合研修が三週間にわたり組まれているが、どうしてもテクニカルな分野の訓練や一般的な講話が多くなりがちなようで、「常識レベルの整備」のお手伝いをしてあげたいところだ。
朝、皆の前に立つと、例年同様、場違いな感じがした。おじ様たちとの仕事に慣れすぎたか。皆だってイケメンの若い講師やCA上がりのきれいなお姉さまにやってもらった方が楽しいよなあ。でも、「どうせやるのなら、レッスンプラン首っ引きの研修講師や型どおりの方法論しか教えないマナー講師が逆立ちしたってできないものをやってやろう」と、何だかんだ言っても結構気合が入るのも、例年同様だ。
挨拶の仕方、電話の受け方、報告の仕方、、などなどを、それぞれひとつずつ教えて新人の「常識レベル」を高位安定まで持っていこうとしたら、それこそ何ヶ月もかかるし、きっとやったそばから忘れられていく。たった一日の研修で受講者に何かを残そうと思ったら、やはり「概念」を教えるしかない。
コミュニケーションは何故必要なのか? 仕事ができるというのはどういうことなのか? などをビジネスゲームやアセスメントツールなどを通じて体感させていく。根っこにある意味や意義を教えてそれが理解されれば、「こういうときはこうするんだよ」を、いちいち教えなくても自然と正しい行動が導かれるものだ。
かくして今年も新人達は新人研修らしからぬ「思考を要求されるプログラム」に一日中取り組まされることになった。高卒大卒混同だし年齢幅も大きいので、どこかに無理は生じているであろう。でも、各自が各自なりに何かを掴んでくれていると信じて、今日も例年のスタイルを貫いた。
終了後、今年もあちこちで「頭が疲れたあ!」の声が聞こえた。
「よしよし」と、例年同様、とりあえず満足した。