新大阪駅の構内で、たこ焼き屋に入った。せっかくだからお好み焼きを食べたかったが、人と会う前だったので全身を覆うであろう匂いを心配した。妥協案が「大阪名物たこ焼き」だった。
店に入って気がついたのだが、僕はたこ焼きをそんなに好きではなかった😨 忘れてた。関西にいた五年間でお好み焼は生活の一部になったが、たこ焼きの良さはわからずじまいだったのだ。お好み焼の生地には複雑な味があり、たこ焼きの生地は小麦粉の味しかしない、というシンプルな切りわけはずっと変わらなかった。「家にたこ焼きの鉄板がある」という関西人のたこ焼き文化にあいまみれるにはついに至らず、やはり自分がよそものであることを再認識したこともあったようななかったような …
何か他のメニューもあるだろう、という期待は見事に裏切られ、本当にたこ焼きしか置いていない店だった。昼時にこんなに超満員ということは、大阪では「たこ焼き=食事」もあり得るのか。僕の中では「お好み焼き=食事」までがやっとだなぁ、と思いながら、たこ焼きセットを頼んだ。
出てきたたこ焼きが思いがけず美味しくて、少しテンションが上がりかけた頃、店の中で繰り返し流されているBGMに意識がとまった。
「♪ 大阪出るとき連れてって~ ♪」
女の人のかん高い声。このチェーン店のCMソングらしい。「おみやげに買ってってくれ~」ということだ。初めて聞いたがすごいインパクトだ。繰り返し繰り返し聞かされているうちに、だんだん脳波に来始めた。
「大阪出るとき ~ ♪」は、「しなの」に乗ってからも、諏訪に帰ってきても僕の脳を支配していた。頭からメロディーが離れない。
思えば、大阪はあの「タケモトピアノ」のCMを生んだ土地だ。泣いている赤ちゃんがぴたっと泣き止む、という伝説のCMである。今も僕の頭に残るCMソングやジングルには、確かに「大阪発」が多い。
大阪のクリエーターは「人の五感に訴えかける」ことに秀で、マーケットはそれを他の地域より喜んで受け入れるのだろう。大阪人の極めて高い言語力も、感性の強さに由来するものだと思う。
エセ関西人の僕にとって、「感性の大阪」はいつも敷居が高い。