小さな会社の採用革命=50の新常識= ㉘ 常に会話のテンポが良い応募者は、概して思考力に欠ける。

小さな会社の採用革命=50の新常識= ㉘ 常に会話のテンポが良い応募者は、概して思考力に欠ける。

スピードとの親和性が低い思考力

わが国では、あらゆるビジネス現場でスピードが重視され、スピード感のある人がもてはやされる傾向があります。採用選考の場でも例外ではなく、経営者や採用関係者は、質問に対してすぐ答えを返すことができ、テンポの良い会話を維持できる応募者を好みます。多分、そのような応募者に「頭の良さ」を感じるのでしょう。仕事の場でより求められる「頭の良い人」は、学力秀才でなく思考力の高い人であることは何度も述べてきました。それでは、皆さんが大好きな「スピード感のある人」の思考力はどうなっているのでしょうか。

 

思考力の高い人は、一つの情報に接すると必ず他の関連情報を求めるので、その時点で「即座に反応する」という行動とは逆の方向に向かって動き出します。それから複雑な情報処理を経て言葉を紡ぐに至るので、そこまでに相応な時間がかかってしまうのです。一方で、思考しない人は一つの情報を得ると反応的に口を開きます。中でも思考しない学力秀才は、一つの元情報を得た時点で頭の中に蓄えてある豊富な情報を引き出せるので、スピードある対応にそれらしいコンテンツがついてきます。その派手さが見る人に訴求しますが、物事の本質から離れたところで発信されるものに生産性は宿りません。どうやら、スピードと思考との親和性は間違いなく低いようです。しかしながら世の中の採用現場では、今日も多くの応募者がスピードに溢れる行動を示して何とか企業側に評価されようと奮闘中です。

 

採用現場におけるスピード信仰の実態

採用面接で面接官の質問に対して即座に答えを返すためには、面接官が発した情報を複合的に処理していたのでは間に合いません。そこで、少しでも早く切り返したい応募者は、質問の全体像や本質的な意味を理解することを早々に放棄し、一つのわかりやすい(キャッチしやすい)情報に反応して、そこで言えることを発信することになります。何を質問しても芯を食わない答えを投げ返してくる相手に対して面接官は相応の違和感を抱くべきなのですが、自分もテンポの良い会話に酔ってしまっているのか、そこに何も感じない面接官が多くて残念です。

 

採用アセスメントのグループ討議でも、与えられた課題をきちんと読まずに与しやすいキーワードを一つ探し、それに自分の経験や一般論を絡めた意見を軽やかに言い放つ応募者が大半です。また誰かが発言すると、その中の一つの言葉を拾った誰かが必ず口を開き、討議の場はスピード感に溢れます。また、一対一で実施する面接演習でも、多くの応募者が「スピード命」で頑張ります。やはり相手の話の内容に向き合わず、相手が発したわかりやすい言葉に飛びついてその部分だけで何かを語ろうとします。相手が話している間、次に自分が何を言おうかを考えている人も少なくありません。自分の言ったことのほとんどが捨てられた挙句に薄っぺらな言葉を投げかけられた相手には、怒りと寂しさしか残りません。

 

世の中を少し変えるために

こんなに多くの人が手っ取り早い安易な道を選ぶのは、もちろん、思考という心身に負荷のかかる取り組みに向かえない人や向かいたくない人が多いからですが、過剰にスピードを有難がる世の中の空気にも一因があるのではないでしょうか。採用アセスメントを通過した人のほとんどが、後に「間違いなく落ちると思った」と呟き、その理由の多くが、「素早く対応できなかったから」となります。どの人も、「考えてから話す」という行動特性を見せており、そこが評価されて通過した人たちです。話す前に少し間ができてしまったり、利害の相反が生まれて葛藤が生じてしまったりしたことで「落ちた」と思ってしまうようですが、本当に優秀な人たちに思考の健全なプロセスを否定させてしまうような世の中は問題です。

 

実際に、面接で応募者が遅滞や停滞を見せると、「頭が悪い」「きっと仕事ができない」と決めつけてしまう経営者や採用関係者がいます。そんな人は、思考が時間を要すること、経験と知識を使う作業領域ではスピード重視もOKだがマネジメント領域での取り組みはスピードと無縁であること、そして、今の時代は作業領域が少なくなっていることなどをご存じないのでしょう。

 

こんな無思考なスピード礼賛文化が続いたのでは、そうでなくても希少である思考力の持ち主に光が当たりません。そしてその人たちの思考力もいつか日の目を見ないうちに消えていくことになります。実際に、静かな若き思考人の多くが、自分のスピード不足を嘆き、思考とは無縁のスピードスターたちを真似ようとしているという現実があります。

 

採用面接に臨む面接官の皆さんへのお願いです。

 

まず、応募者の反応の速さをただ有難がるだけでなく、少しだけ疑いの目を向けてみてください。

 

次に、考えるために止まる応募者もいるのだということを知ってください。何もわからなくて立ち往生する人もいる反面、思考のプロセスの中で時間を使う人も少数ながら存在するのですから。最後に、「知識を求めている時はスピードを求め、思考を求めている時にはとことん待つべし」という面接官の鉄則を思い出してください。知識を求める質問と思考を求める質問を使い分けメリハリを利かせて応募者に働きかけることで、面接官の品格が高まります。

 

今の若者に思考回避の傾向が強いのは、大人たちにも大いに責任があります。今からでもできることはたくさんあります。

東京の世田谷に生まれ(昭和35年)鎌倉に育ちながら、高校卒業後に憧れの関西に移り住み、大学卒業時には立派な関西弁を話せるまでに成長する。大学で体育会ラグビー部に足を踏み入れるも、タックルが出来なくて干され、徹夜のバイトが監督にばれて干され、と、「なんちゃってラガー」への道をまっしぐら。4年生でやっと公式戦への出場がかない、初出場の日の前夜は、ジャージーを抱いて泣きながら寝た。 卒業後に入った商社で、早速、語学難民となり、「このまま日本に置いておいてもこいつは英語を覚えない」と当時の事業部長に判断されて、入社後1年も経たないうちに香港の現地法人に飛ばされる。現地の英国人達とプレーする中でようやく面白くなり始めたラグビーの合間に仕事も少しだけ頑張る、という充実の日々を送り、バブルもはじけた平成2年の春に5年間の任期を終えて帰国。 その後、いわゆる大企業の海外部門を転々とするが、会社と仕事が肌に合わず、日に日に心が萎んだ。ついに重度の抑うつ状態にまで陥ってしまったが、そこに至ってようやく「自分の強みは本当に『国際』『語学』なのか?」「本当に自分の良さを活かせる仕事は何なのか?」というテーマに、正面から向き合うことになる。「世間からの評価」への執着を断ち切り、自分の価値観に正直になって新たなフィールドを選んでからは、心の元気を取り戻し今に至る。 37歳の時に入社した人事系のコンサルティング会社でアセスメントセンターに出会って惚れ込み、これを生涯の仕事とすることを決意。39歳の時に今の会社を設立した。 歳をとっても痛くて苦しいことが大好きな「変なおじさんたち」が集う中年ラグビーチーム(不惑倶楽部)に所属していたが、50を前にして捻挫をこじらせ距骨壊死というややこしい状態に陥って離脱。10年間手術を公言し続けるも諸事情で実現せず「切る切る詐欺」と揶揄されてきたが、還暦を直前に控えた2019年の暮れに突如人口距骨への部品交換を決行した。「これで俺のラグビーとゴルフは変わる!」と、加齢という現実から目を逸らして盛り上がる。月イチで山へ芝刈りに行く日常は戻ったが、たくさん叩くのは足のせいではなかった・・・ことに薄々気づき始めた今日この頃。

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