小さな会社の採用革命=50の新常識= ㉔ 応募者の志望動機に一喜一憂する必要はない。

小さな会社の採用革命=50の新常識= ㉔ 応募者の志望動機に一喜一憂する必要はない。

志望動機など眼中に無い採用選考

某地方都市に、もう十年ほど前に私たちが採用アセスメントの内製化を支援し、以来、多くの社内アセッサーを抱えて採用アセスメントを毎月のようにがんがん実施している中堅企業があります。その地方では独り勝ちを続ける高収益企業であり圧倒的採用勝者である同社は地域社会から一目置かれる存在ですが、そこでチーフアセッサーとしてアセスメントの現場を引っ張ってきた人事課長が、就活サイトの人事ブログにこんなようなことを綴っていました。

 

無理にかっこいい志望動機を作らなくても、志望動機に優劣はないから大丈夫だよ。

 

「土日休みだから」でも「家が近いから」でも「ボーナスがいいから」でも全然OK!

 

家が近い人・・・うちに来ない?

 

一見優しげで鷹揚で緩い言葉が並びますが、この人は列をなして応募してくる応募者全員に真剣勝負で向き合い、そのほとんどに×を出している実に怖い人なのです。アセッサーとして応募者の本質と日々向き合い続けているので志望動機なんてどうでもよく、とにかく選考母集団を増やしたくて間口を広げようとしているのだと思います。余計な情報に目を奪われずに人を見極めようとする採用者にしかできないことです。私も、応募者が書いたり語ったりする志望動機には興味がありません。多くの人にとっての本当の志望動機は、打算やあまり大きな声では言えない私利私欲が普通に絡んでいるものです。採用選考に備えてお化粧した志望動機に意味はありません。

 

応募者の志望動機に酔う経営者

かくいう私も創業してからしばらくは、「奥山さんの理念に共感しました」「この会社で世の中を変えたいですぅ」などという美しい志望動機に接すると、つい嬉しくなってほいほい採用していました。でもその人たちは、入社後しばらくすると例外なく面接時とは別の人になっていました。「世の中を変える前に今日の仕事をしてくれぃ」と、私は心で叫んでいました。「やたらと理念を語りたがる人は、日々の泥臭い取り組みに汗をかくことを嫌うのだ」という行動分析の公式が、当時の私の腹にはまだ落ちていませんでした。

 

そんな自業自得の過ちを何度か繰り返して、さすがに私も「情実採用」を反省しました。そして創業六年目にして初めて応募者を集め採用アセスメントを実施しました。それまで六年間も自社商品を自社の採用に使わなかった理由は、私の中で「うちの会社に強い思いがある人を採用しなくては」という執着が強すぎたからでしょう。その時アセスメントの分析に耐えて高倍率を突破した人は、今年で在籍十六年目の押しも押されもしないプロアセッサーになりました。あの時執着を捨て妄想を断ち切って科学的採用に舵を切らなかったら、彼女とは間違いなく縁がありませんでした。彼女を採用できていなかったら、この会社が今のような形で存在することは無かったかもしれず、私も採用アセスメントに救われた人間の一人です。採用アセスメントの翌日にあらためて彼女を呼んだ最終面接で、彼女の口から自分が応募した会社への思いが語られることはありませんでしたが、終始自然体で質問に一つ一つ誠実に答えてくれました。そういえばこんな問答もありました。

 

「なぜ、うちの会社を志望したのですか?」「あの、求人がハローワークに出ていたので」

 

「うちのHP見てきましたか?」「い、いえ、見ていません」

 

優秀な学生の志望動機は意外とそっけない

採用アセスメントを通過した応募者との最終面接を終えた顧客企業の社長から、連絡が入ることがあります。そして「今終わったのですけど…志望動機が弱いんですよね」という心配そうな声には「大丈夫です」と即答します。アセスメントでその人が本当に優秀であることを確認しているからこそ言えるのですが、「優秀な人材はやる気に溢れた志望動機を元気一杯に語ってくれるもの」と信じて疑わずに今までやってきた社長さんたちは、なかなか安心してくれません。

 

そもそも、新卒採用に臨む学生が応募する会社の何をどれだけ知ることができるというのでしょうか。事前に知ることができるのはせいぜい会社のホームページに出ているレベルの情報だと思うのですが、そんな限られた情報を元に作られる志望動機に、何を期待すればよいのでしょう。就職活動中の学生に、志望先企業の本質や実際の業務環境を事前に知る術はありません。そのことを合理的な思考で受け入れる学生は、本気で志望動機を突き詰めることの意味を疑い、少なくても志望動機を綿密に作り込むことには興味を持たないでしょう。そもそも本当に優秀な学生は「どんな会社に行ってもやるべきことをやればいいのだ」と腹を括っています。未知の場所への不安が少ないので、神経質に入社後をシミュレーションする必要もありません。そのように考える人が応募先企業にアピールするために志望動機を一生懸命創作することは考えにくく、「優秀な学生の志望動機が意外とそっけない」という私の結論は、多分間違っていないと思います。

 

もちろん、中には本当にその会社に強い思いを込めて応募する人もいますので、「志望動機が熱い人は優秀ではない」と言っているわけではありません。しかしながら、応募者が就活対策で練り上げた志望動機を見て無邪気に喜ぶのはやはり馬鹿げています。そして、過剰な志望動機を掲げない自然体の応募者を「やる気がない」とみなすのはもっと馬鹿げています。

東京の世田谷に生まれ(昭和35年)鎌倉に育ちながら、高校卒業後に憧れの関西に移り住み、大学卒業時には立派な関西弁を話せるまでに成長する。大学で体育会ラグビー部に足を踏み入れるも、タックルが出来なくて干され、徹夜のバイトが監督にばれて干され、と、「なんちゃってラガー」への道をまっしぐら。4年生でやっと公式戦への出場がかない、初出場の日の前夜は、ジャージーを抱いて泣きながら寝た。 卒業後に入った商社で、早速、語学難民となり、「このまま日本に置いておいてもこいつは英語を覚えない」と当時の事業部長に判断されて、入社後1年も経たないうちに香港の現地法人に飛ばされる。現地の英国人達とプレーする中でようやく面白くなり始めたラグビーの合間に仕事も少しだけ頑張る、という充実の日々を送り、バブルもはじけた平成2年の春に5年間の任期を終えて帰国。 その後、いわゆる大企業の海外部門を転々とするが、会社と仕事が肌に合わず、日に日に心が萎んだ。ついに重度の抑うつ状態にまで陥ってしまったが、そこに至ってようやく「自分の強みは本当に『国際』『語学』なのか?」「本当に自分の良さを活かせる仕事は何なのか?」というテーマに、正面から向き合うことになる。「世間からの評価」への執着を断ち切り、自分の価値観に正直になって新たなフィールドを選んでからは、心の元気を取り戻し今に至る。 37歳の時に入社した人事系のコンサルティング会社でアセスメントセンターに出会って惚れ込み、これを生涯の仕事とすることを決意。39歳の時に今の会社を設立した。 歳をとっても痛くて苦しいことが大好きな「変なおじさんたち」が集う中年ラグビーチーム(不惑倶楽部)に所属していたが、50を前にして捻挫をこじらせ距骨壊死というややこしい状態に陥って離脱。10年間手術を公言し続けるも諸事情で実現せず「切る切る詐欺」と揶揄されてきたが、還暦を直前に控えた2019年の暮れに突如人口距骨への部品交換を決行した。「これで俺のラグビーとゴルフは変わる!」と、加齢という現実から目を逸らして盛り上がる。月イチで山へ芝刈りに行く日常は戻ったが、たくさん叩くのは足のせいではなかった・・・ことに薄々気づき始めた今日この頃。

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