今日もゴルフの練習場に行った。お世話になっているゴルフの先生が来る日だ。もちろんつきっきりではないが、毎週月曜日にはそこに常駐していて、常連たちを順番に教えてくれる。冬季はお休みで、今日が再開の日だ。
昨日は某極安コースでラウンドした。そこは安い+難しい+面白いのお気に入りコースで、今年二回目だ。入りの三ホールはパープレーで、「七十台でまわってしまったらどーしよおおお…」とマジで思ったが、一瞬でもゴルフを舐めたばちがあたり、終わってみたらお約束のようにいつものスコアだった。
あの三ホールの集中力を六倍も維持しなければならんのか、と考えるとめまいがする。道は遠い。
というわけで、今日も真面目にいそいそとゴルフのお勉強にでかけました。
いつものように、先生から新しい気づきをもらい、昨日崩れた理由も体系的に理解できて、練習のテーマがまた増えた。でも、冬の間、週に二回、四百球を打ち込み、山梨まで行って寒さに凍えながらラウンドした甲斐があってか、久しぶりのレッスンで少し生まれ変わった姿を先生に見せることができ、初めて褒められた。
できの悪かった生徒が少しだけ優等生に変容したのに気をよくしたのか、いつもは時間が来ると早々と帰ってしまう先生が、残っていろいろな話をしてくれた。この先生は昔ツアープロだった方で、今はゴルフ用品店を経営しながらレッスンやトーナメントの競技委員などを精力的にこなす「ゴルフの伝道師」である。
トーナメントで自分がプレーした体験談や有名選手の裏話など興味深い話が次々と飛び出し、いすにも座らずクラブを握ったままのゴルフ談義は長時間に及んだ。
先生の所属していたクラブの後輩にあたる某有名プロのユニークなキャラクターも語られ、その人の逸話でも盛り上がったが、先生がふと漏らした「あいつが入ってきて奴のスイングと打球を見た時、俺は第一線から退くことを決めたんだよね」の一言は、おもしろおかしかった時間を少しの間止めてしまうほど素敵だった。
「これからはこういう奴の時代だと思ったよ」
上背もなく絶対的パワーで劣る先生が苦労と試行錯誤を重ねてきた時間が一瞬で精算された、という話なのにこんなにさわやかな感じがするのは、「絶対的に力のある奴が必ず勝つ」というプロの世界の潔い合理性ゆえんだろう。「刀できれいにスパッと切られると痛みを感じない」というが、そんな感じだったのだろうか。
その後輩プロは、今トッププロの一人としてトーナメントで活躍している。きっとたくさんの人に引導を渡してきたのであろう選ばれし者は、その人たちのためにも勝ち続ける使命を負っているはずだ。
プロはプロを知る。高いレベルで理解しあう凄さへの憧れからか、先生が僕の中で尊敬すべき「美しき敗者」になった。