おっさんラグビーの不惑倶楽部から怪我で足が遠のき早二年である。その間に僕のパンツの色も紺に変わり(数えの四十代…白、五十代…紺)、試合の消息などのメールも途絶えていた。最近、ある先輩の気遣いでまたメーリングリストに入れてもらい、一日に何本も「ラグビー情報」が入ってくるようになった。
昨日のメールに先週の試合のレポートがあった。
「今日の試合で二選手がエキサイトしイエローカードが出ました。歳下の選手にハードタックルを受けて『まだまだだな!若造が!』と吐き捨てたある選手に、言われた後輩選手が『何をジジイが!』と言い返したことが原因だそうです。ちなみに二人とも八十代です。」
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しつこく月例の話だが… 上がり三ホールで四オーバーを打って優勝が逃げた。
七番の打ち下ろしのミドル。ティーショットにアイアンを握りながらボールは左の林へ。一瞬くらっとしたが、ボールがフェアウェイに出てきた。キャディーさんが「運が来てますよ」「優勝するときはこんなものですよ」とささやく。何とかパーを拾う。
八番打ち上げの短いミドルのティーショット。ドライバーで今日初めてミスショットが出た。やはり左の林のOB方向へまっしぐら。万事休す。暫定球を打って、祈る思いで林へ。 「ありましたあ!」 見つけてくれたキャディーさんが神に見えた。フェアウェイに出して三オン。ピンの上側二メートルにつける。
二回救われた。これはゴルフの神様が僕に優勝させたがっているのだと思った。いつもは冷たいのに… このホールもパーが見えた! と思った瞬間、今まで張り詰めていたものがふと緩んだ。あの時の緩み方を、今なおよく覚えている。 気の緩みがインパクトの緩みになったのだろうか、それまで鬼のような集中力によって体幹と一体になっていたパターが暴れた。ボールはカップを蹴ってこれでもかと転がり落ちる。
四メートルオーバー
「なんで下りをそんなに強く・・・」同伴競技者の何ともいえない表情が横目に見えた。
この瞬間、優勝が逃げた。
「んだよ。おめえはよう。二回も助けてやったのにもうシラネ」 神の声が聞こえたような気がした。
結局その八番と九番をダボとした。結果論だがその二ホールをパーで上がっておけば優勝を掴めたわけだ。
この月例の数日前から僕はイメージトレーニングを行っていた。その一環として、寝る前に十八ホールをイメージでラウンドした。目標のスコアを決めてどういうショットを打つかイメージしていく。昨夜までにこなしたラウンド数は、十は下らないと思う。
目標スコアに向けてイメージラウンドする意味は、その目標値を潜在意識の中に刷り込ませることにある。そして、「実際のラウンドでは、その目標スコアは忘れてプレーしなくてはいけない」が鉄則だ。ラウンド中に目標スコアに向けての計算が入ると、心や体が硬直するからである。
実は、あの八番のグリーン上で「パーが見えた」時、僕は気がついてしまった。「パーが取れれば、これまでの十七ホールのトータルスコアが昨夜と同じになる!!!」という恐るべき偶然(?)に。そして、「ここともう一つ『昨夜と同じように』パーを取ればイメージトレーニングの最大成果としての優勝が手に入る。」という現実に震えた瞬間、潜在意識のマックスを搾り出してきたそこまでのメンタルが、ふっと抜け緩んでしまったのだろう。
今回、イメージトレーニングというものを試してみて、意味と意義がよくわかった。出来過ぎの偶然があったりもしたが、自分のメンタルコンディションをここまで徹底的に客観視したことはなかったので、多少はその効果がスコアに影響したのかもしれない。
それにしても、ゴルフが「七割メンタル」のスポーツだとはよく言ったものだと思う。僕がこれほどゴルフにはまってしまったのは、真剣な競技の場で自分のメンタルと向き合うのが思いのほか楽しいからだと思う。
イメージトレーニングの成果は、「ポジティブシンキング」そのものに他ならない。
ポジティブシンキング… 今の僕には高すぎるハードルだが、それを求める努力だけは続けたいと思う。
八十になっても闘争心をもってラグビーやゴルフを続けられるように。