東京駅にほど近いある企業を初めて訪ねた。
そこは僕が新卒で入った会社の近くだった。香港に飛ばされるまでの一年間通っていたところなので、懐かしかった。
通りやお店は昼食に出てくる会社員で溢れていた。二十四年ほど前、僕もこのあたりで先輩や上司の後をカルガモの子供のようにくっついて昼休みを過ごしていた。
十時くらいになると「今日は何食おっか?」と先輩たちが聞いてきた。今思うとろくな職場じゃないね。新人で大した仕事もしていなかったので、僕もヒルメシを楽しみに二時間を過ごした。 場所柄、選択肢は無限大にあったので、本当に毎日違うものを食べて楽しんでいた。知るぞ知るとんかつの名店、コムタンやカルビクッパの超うまい韓国メシ屋、安い旨いの元祖のような海鮮料理店、某有名洋食屋 … そんなところの格安ランチメニューを片っ端から試していた。昔の僕が羨ましい。
そして、毎日、食後に喫茶店でコーヒーを飲んだ。四十歳以上だと懐かしいと思う人がいるかもしれない。当時のサラリーマンは昼飯を食べた後、喫茶店(ドトールとかではない)でコーヒーを飲んだのだ。一時間の短い昼休みにどうやって時間をやりくりしたのか、そもそもなぜその必要があったのか、よく覚えていないが、午後の仕事に向けて気合を入れる儀式だったんだろうなぁ… たぶん。
アポの時間まで少しあったので、コンビニに入ろうとしたが、昼ごはんを買う人たちで押し合いへしあいの満員状態だったので断念。少しあたりを散歩した。やはり立ち食いそば屋や牛丼屋などの「かっこみ系」の店が列をなしていた。列はどんどん進む。ものすごい回転の速さだ。
今時、「お昼を楽しむ ♪ 」なんて悠長なこと言ってちゃいけないのでしょうかね。でも、毎日同じようなもの流し込んでたら心が荒まないかなぁ。「食」をないがしろにすると心の豊かさが損なわれる。心が豊かに保たれないといい仕事できないよね。