ワークスタンダードという概念

ワークスタンダードという概念

私たちは、任意の場面で仕事に投入されるエネルギーの水準を「ワークスタンダード」と呼んでいます。「あなたは自分のエネルギーの何パーセントくらいを仕事に使いたいですか?」という問いかけに対する、それぞれの心の答えが、それぞれのワークスタンダードです。

 

「仕事に自分が持てるだけのエネルギーを注ぎ込める自分でありたい」と願う人も、「仕事は自分の人生の中ではほんの一部に過ぎないからほどほどのエネルギーしか使いたくない」と考える人も、そのスタイルは自分の価値観(仕事観)に基づくものであり、他人からあれこれ言われる筋合いはありません。しかし、人を雇う方の立場からすれば、自分ができる限りのことを精一杯やってくれる「働き者」の前者の方が有難いに決まっています。ワークスタンダードが一定の水準を下回る人は、人を採用しようとする企業にとって 「リスク」になります。

 

ワークスタンダードが低い人を組織に招き入れることのリスクは、その人の「熱量の低さ」に起因します。持てるエネルギーを精一杯投入することを避け、「省エネ」に徹する人の言動は、常にクールで、「根性」「精神論」「泥臭さ」「義理人情」のような暑苦しいものとは無縁です。取り組みや人間関係に「熱」を求める人にとっては、さぞかし物足りない個性だろうと思われますが、その軽やかな生き方や振る舞いは、ある意味今日的とも言えるでしょう。

 

「省エネ志向」が生み出す「突き詰めない楽な生き方」「無理しないマイペース」は、現代風の容姿に乗っかったりするとかなりスタイリッシュであり、現代の象徴のようにもてはやされることもあるのでしょうが、これが仕事の世界に持ち込まれると、かなり格好悪いことになってしまいます。

 

「ワークスタンダード」が顕在化するのは、「任意」の場所です。そこにかけるエネルギーを必要最低限に抑えようとするのが、ワークスタンダードの低い人です。「やるからには限られた時間の中で最も良いものを出そう」などという思いは全く持ち合わせず、当然、「質」という概念との親和性は高まりません。どうしてもこなさなくてはいけない「最低限」の部分に対しては、よほど問題のある人でなければエネルギーは投入されるわけですが、そこから先の、「エネルギーの使い方を任される部分」において、「ワークスタンダード」の差による各自のパフォーマンスの差が生じるのです。

 

指示されたことすらやろうとしない「ワークスタンダードが極めて低い人」が、周囲の人に与えるストレスの大きさについては想像に難くないと思いますが、「ワークスタンダードが低い」とされる人の中には、課せられたことを一応過不足なくこなす力を持ちながら、強制力のかからないところでは、一切エネルギーを使わない人種が相当の割合で含まれます。そして、その人たちは、「極めて低い」人たちとはまた違った種類のストレスを、周囲の人たちに与えています。この「グレーゾーン」のような人たちの「負の部分」をしっかり見極めることは、プロのアセッサーでも決して容易ではありません。

 

 

 

・少しでもよいものをお客様に提供するために、質にこだわって何度もやり直し、時間をかけて仕上げていく

 

・会社の命運をかけたプロジェクトを成功させるために、度重なる時間外勤務や休日出勤を厭わない

 

・会社の理念に共感し、その具現化を目指して、情熱を持って自主的にハードワークに取り組む

 

・組織の一員としての帰属意識を常に重視し、会社の行事などにはできる限りフルタイムで参加する

 

・後輩や部下には、自分の価値観は封印し、組織の一員として組織の方針や組織としてのあるべき姿を伝えるスタンスを取る

 

・いつも始業時刻よりかなり早く出社し、余裕のある始動を心がける

 

 

これらは、「ワークスタンダードの高い人」によく見られる行動例ですが、これらの共通点は、誰にも強制されない「任意の場所」で、自主的かつ精力的に動いているというところです。前述の「グレーゾーン」に属する人たちが、これらの行動を見せることは、まずありません。「最低限必要とされること」以上の余剰部分で生産性を創出しようとする価値観を持ち合わせていないからです。

 

本音の部分で、社員や部下に、このくらいのことは求めたいと考える経営者や管理者もたくさんいらっしゃいます。情熱や理念を有し、「思い」を持って経営やマネジメントに当たっている人ほど、その傾向が強いのではないでしょうか。しかし、「労務管理的」に、このようなことを命令したり強制したりすることはできないので、その「思い」どおりに社員や部下が動いてくれるかどうかは、彼ら彼女たちの「ワークスタンダード」という価値観に任せるしかありません。

 

もし、例に挙げたような行動などと無縁の、自分に課せられた作業のみを淡々とこなすだけの社員がいて、「利他的」「奉仕的」「情熱的」な熱量が極めて低い言動が目についたとしても「命令や強制の届かない部分」を指導することは、あまり現実的ではありません。

 

このようなことの繰り返しは、マネジメント側にとって、意外と大きなストレスとなります。マネジメント側のワークスタンダードが高い場合には、そのストレスは深刻なものになる場合が多く、「熱」や「思い」とは無縁の、自分とは全く異なる価値観に触れるたびに、そのストレスはボディブローのように効いていきます。

 

 

 

一方、「例に挙げられたような行動なんかそもそも求めていない」「言われた最低限のことをきちっとやってくれさえすればいい」と考える経営者や管理者の方も少なくないと思います。会社のために時間を削って働けとか、会社の行事に出ろとか、朝もっと早く出てこいとか、そんなことを労働者に求めるのは労務管理的におかしいし現代的ではない、というご意見もあるでしょう。そのような人たちであれば、「最低限必要とされることしかやらない」社員や部下にストレスを感じることはないのでしょうか。

 

機械化、ロボットの進む昨今、定型業務の反復だけをやっていればよいとされる作業者などほとんどいません。「指示されたこと」だけで済む仕事が無くなってきているなら、「指示されたことだけしかやらない」人たちの仕事の質は、いかなる場面においても担保されにくくなっているはずです。結局、「指示されたことしかやらない」人であっても、それすらできない人であっても、「ワークスタンダードが低い人」の仕事の質が低いことには変わりはないのです。

 

「言われたことだけをちゃんとやってくれればいいんだよ」とうそぶく経営者や管理者も、本当に言われたことしかやらない人がいたら、おそらく自分の利害に関わる部分でストレスを抱えることになると思います。

 

 

 

「ワークスタンダードが低い人」は、そのレベルにあまり関係なく、本人とその周辺の生産性を毀損することがほとんどです。「ワークスタンダード」は、その人の価値観そのものなので、指導をしても変わるものではありませんし、本人としては、それを変える意味も必要もありません。なので、できるだけ経営や管理上のストレスを背負いたくない経営者や管理者としては、そのような人を採用してしまうことを極力避けたいところです。

 

 

前述のように、「ワークスタンダードが低い人」の典型的な行動特性は「省エネ」です。アセスメントでワークスタンダードを観ようとする時、アセッサーはとにもかくにも「エネルギー量とその継続性」を注視します。涼し気な表情でクールな佇まいのその応募者が、あなたのストレス源になってしまう可能性を、誰も否定できません。


東京で生まれ(1960年)、鎌倉で育ちながら、京都に憧れて高校卒業後に関西へ流れるが、何故か大阪の大学(関西大学法学部)へ入る。 念願の体育会ラグビー部に足を踏み入れるも、タックルができなくて干され、徹夜のバイトがばれて干され、と、「なんちゃってラガー」への道をまっしぐら。4年生でやっと公式戦への出場がかない、初出場の日の前夜は、ジャージを抱いて泣きながら寝た。 卒業後に入った商社で、早速、語学難民となり、「このまま日本に置いておいてもこいつは英語を覚えない」と当時の事業部長に判断されて、入社後1年も経たないうちに香港の現地法人に飛ばされる。現地の英国人たちとプレーする中でようやく面白くなり始めたラグビーの合間に仕事も少しだけ頑張る、という充実の日々を送り、バブルもはじけた平成2年の春に、5年間の任期を終えて帰国。 「国際人の俺様にはもっと大きい会社がふさわしいのさ」と、わけのわからないことをつぶやきながら、いわゆる大企業の海外部門を転々とするが、会社と仕事が肌に合わず、日に日に心が萎んだ。ついには重症の抑うつ状態にまで陥ってしまったが、そこに至ってようやく、「自分の強みは本当に『国際』『語学』なのか?」「本当に自分の良さを生かせる仕事は何なのか?」というテーマに、正面から向き合うことになる。 「世間からの見られ方」への執着を断ち切り、自分の価値観に正直になって新たなフィールドを選んでからは、心の元気を取り戻し、今に至る。37歳の時に入社した人事系コンサルティング会社で「アセスメントセンター」に出会って惚れ込み、これを生涯の生業とすることを決意。39歳の時に、今の会社を設立した。 50歳近くまで続けていたラグビーだったが、試合で足首をややこしく負傷してしまって以来、プレーをしていない。復帰するには手術が必要で、数年前から「今度手術するんですぅ」とあちこちで触れ回っているが、諸事情で延期が繰り返され、周囲からは「切る切る詐欺」の声が聞こえ始めている。

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